メディア研究 ゼミ発表

  立教新座中学校・高等学校の情報科選択科目「メディア研究」の授業で、受講生たちがゼミ発表を行いました。





  この授業は高校3年生に開講されている講座で、「メディア」の「研究」に焦点を当てています。3年生は全員が卒業論文を作成する課題があり、それと関連する内容となっています。しかし、本講座では単なるレポートや調べ学習、何らかの方策をまとめただけの論文を目指すのではなく、「研究」の視点から論文を制作できるように受講生の研究活動をサポートしています。



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  初回は、「学術論文」と「レポート」の違いを説明し、研究の進め方、論文制作のプロセス、テーマ設定、研究計画書の作成、情報検索の方法、クラウドを用いた論文管理の方法などを説明しました。また、日本教育メディア学会や日本教育工学会の全国大会・研究会についても紹介し、参加すること(研究が進んだ人は発表すること)を推奨しました。



  2回目の授業では、わたしが実際に学会で発表した発表資料を用いて、研究発表のデモンストレーションを行いました。大きな効果があったようで、振り返りシートの記述には「発表デモンストレーションを聞いて、発信する力とスライドの作成力が強くないと良い発表はできないんだなと実感しました。」、「発表のデモンストレーションでは発表の仕方や構成が完璧に感じたので3週間後の発表の緊張感が増した。」(完璧ではないんだけどなぁ…)といったものが見られました。



  さて、その3週間後。第1回ゼミ発表(授業自体は3回目)です。学会と同じような時間配分、質疑応答を行いました。7分間の発表の後、4分間の質疑応答を行いながら、先行研究の調べ方やまとめ方、問題の所在から研究の目的を設定する過程、目的に即した研究の方法の立て方などについて、クラスメイト・教員と様々なフィードバックを交換しました。発表資料の内容が要件(事前に研究の背景や目的、方法などを記述するように伝えてありました)を満たしていない、先行研究を全くと言っていいほど調べられていないなど、さまざまな改善点を意識することができました。



  授業後、受講生が書いた振り返りシートには、以下のような様々な気づきが書かれていました。

「初めて学会の形式でやってみて、とても良い経験になった。自分の発表を振り返って、研究の目的が個人的な目標になっていたため、学術的な目標を設定しなければと感じた。」

「Word(発表要旨のこと)とPowerPoint(発表資料のこと)は内容を揃えておくことも今日初めて知った。」

「今日の授業は自分とは違うテーマの発表を聞いて、自分の発表用資料の足りないところなどを確認できました。また、自分の意見や主張を客観的に見つめなおすことができました。」

「先生の話では言葉に対する解釈や向き合い方についてが印象に残っている。ただなんとなく言葉を使い自分の意見を述べるわけではダメでしっかりと意味を理解し自分の意見を述べるときにその意見の信憑性や正確性をどう証明するかという話にどうしようとなってしまったのでこれから考えていきたい」


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  講座を始めるに当たり、これまでに学術論文を読んだことが一度もないという受講生に対して、提出期限が10月末まで(つまり、あと6か月弱)というスケジュールの中では「ティーチング」で指導することは難しいと判断しました。そこで、受講生と卒論のテーマについて話す時には、

  1. 傾聴すること
  2. 確認や要約、質問をすること
  3. 気づいた点を共有すること

を心掛けるようにしました。そうすることで、受講生の学びの意識を高めることにつながるのです(アカデミック・コーチングといいます)。実際、3回の授業が終わって、受講生の意識が講座開始前とは大きく異なっていることを感じています。生徒の意識を高める方法は様々ですが、アカデミック・コーチングは研究をサポートする「1対1の対話」として非常に良いと思いました。



  今後は、学術論文や研究書に触れながら、受講生自身が研究に身を浸すことになります。その中で、いかに受講生の研究をサポートできるか。その方法を今後も模索していきます。  

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